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「ベルカ、吠えないのか」古川日出男

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)


セミナーに行ったりで、電車に乗る機会が連続したので、読了。面白い! 前に読んだ「サウンドトラック」以上に文章に酔った。


歴史の教科書がこんなんだったら、みんな世界史好きになるだろうハイテンションと叙情と哀愁と無慈悲と愛情で、ソ連アメリカを取り巻く世界情勢、戦争が、犬を主軸に添えて語られていく。最初から、最後まで、ずっとそんな調子で読めたからすごい。退屈にならない。場面はどんどん展開していくし(1943年から、199X年まで)、登場人物はどんどん交代していくのに、勢いはとどまらず、読者のテンションも止まらない。舞城王太郎とはまた違う、この言葉のリズムの美しさは、読んだ後しばらく文章がおかしくなるだろう毒をもっている。やられた。


この嘘を広げていく・塗り固めていく作業を、個人的に無制限に推し進めていく、その努力と力量はすごいなと思ったし、すごく楽しそうと思った。それがこんなに楽しいものになるなんてなー。フィクションの可能性という意味の爆弾をもらった。