白飯

好きな物100

「ピラカタ・ノート」ニットキャップシアター

架空の街「ピラカタ」のなりたち,シャガール好きの少年,
反対少女と団地の大王,世界に取り残された老人と少女,
いくつもの物語が交錯してニュータウンの神話を綴ります。

地方都市で青春を過ごしたすべての人と,そうでもなかった人へ!

http://knitcap.jp/stage.html

いくつかの断片が交錯するタイプの、よくわからないと、まったくわからない作品だけど、良かった。場面場面で見せたい一瞬というかシーンがあるんだろうなあ、という感じがした。たぶん、そのドキリとするような一瞬一瞬が、断片を胸に刻みつけたように思う。それぞれの断片が、力を持って、迫ってきたように感じた。楽しかった。


松下幸之助之神と京阪電鉄之神がまぐわり、ピラカタ市消防署を生み、ラポールピラカタを生み、TSUTAYAを生み、ローソンを生み、数々の団地を生んだというピラカタ神話。子供のできない夫婦が買い始めた古代魚の水槽に名付けた仮想の街ピラカタ。シャガールの絵が好きな少年。終わりゆくピラカタに残された老人と女の子。生まれつき骨が弱く喋ることも立ち上がることもできない少年。少年の父親は6年越しに付き合っている部下と再婚を考えている。シャガール好きの少年は孤独を深めていき、骨が弱い少年は、悪童たちに竹藪に捨て置かれてから、昏睡し続ける。

物語の断片は暗く、どんよりと思い空気を吸って、登場人物達は生きている。ニットキャップが得意な、男女間(夫婦とか家族)の細かい仕草で、リアル(あるある)は、そういう空気を助長している。ただ、いつもの馬鹿馬鹿しさも健在で、何度か吹き出して笑った。
こういう断片が絡む話(前作のヒラカタノートとか、フェイスレコード)の読解は大体あきらめているのだけど、迫力あるシーンで、物語にぐっと引き込まれたように感じる。特にシャガールの少年が尿神様を失い、放尿しているところを団地の女の子に見られてからダークサイドに墜ちたあと、(ありがちな展開だから?かもしれないけど)人間に戻る一瞬はとても救いを感じて嬉しかった。ただラストシーンで少年が投げた物が気になる。あれは、何だったんだろう・・・。
ラストも断片達は決してハッピーエンドには終わらず、世界は、重苦しいままだけど、たしかに街はあって、人がいる。そこから何か、別の物語が生まれていくのだろうという感覚は残った。日常を再び産み出す為の神話、ということだったのかな。
楽しい舞台でした。

火曜までやってるから、行ける人は見に行くといい。でもバッチリ下ネタあるから、付き合いたて(未満)の女の子とか連れて行くと、舞台に集中できなくなるからやめよう!