白飯

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悪意のインスタンス

傘続報。憎しみに焼かれるとは、こういうことかと思い知った。
そもそも、傘を盗まれないようにするというよりは、傘泥棒に嫌がらせする為のアイデアとして、傘をさしたら目の前にひもで吊された紙があらわれて、そこには「傘泥棒!」と書いてある、というのを冗談で話していていて、あ、これできるなと思ってしまったのが始まり。
傘泥棒に対する罵詈雑言を書いたメモを、どこかの展示会にいったときにもらった首からかけるカードケースに入れて、傘を開くと、メモが出てくる仕掛けを傘に仕込んでおいた。間違えて誰かに持って行かれないように持ち手にこれでもかと色つきのテープで印をはっておいた。
悪意が形を持ってしまった。
途中、悪戯にしてはやり過ぎで、社会人のやることじゃないな、という感覚はあったけれど、傘が盗まれなければ、誰の目にもとまらないのでいいかと放っておいた。そして、三日ほどが経った。
今日、夕方に夕立のような雨があって、定時後に傘を確認したら、傘が開いた状態で、メモが出ていた。
多分、置いてある傘を使おうとした人が傘を開いたけれど、メモを見て、気持ち悪い、と思って、そのまま傘立てに戻したのだろう。
本当に罠が発動したという驚きと、傘泥棒に一矢報いてやった感を覚えたが、メモを見ると、その言葉の持つ悪意に怖くなってしまった。この仕掛けは悪意そのものだ。
そして、傘を回収して、とても嫌な気持ちのまま帰宅し、現在に至る。
気を付けよう。憎しみは自分にはね返る。全然わかってなかった。まったく、こんな気の弱い人間が、悪意なんて取り扱うべきではなかったのだ。