「ベビーブームベイビー」悪い芝居
どこだかわからない地方の家族。母の告別式の翌日に失踪した長男が、10年ぶりに突然帰ってくる。父親の週刊現代を夜にこっそり読んだり、友達と「母殺し機」「ハッピーターン」についての妄想を語ったり、妹と確執があったり、といったメインのストーリーが中央の居間で行なわれるのと平行、ときに混線しながら、よくわからないコントやら小説を書いているという男とそれを絶賛する女たちとのエロスの絡みの挿話とかが、居間の外側で行なわれる。最初外側で行なわれているコント風のが全然面白くなくて、でも笑いと狙ってないわけでもないけどなんか外してるというちぐはぐな印象を受け意図が全く読めず、これははずれだったかと、客演のニットキャップシアターの大木湖南さんに注目してたんだけど、後半から、並行する小説を書いてます男と女の会話の輪郭が見えてきて(SNSで馴れ合う人達っぽい)、メインストーリーや面白くないコントが、男の書いた小説らしくて、小説と男の心情がシンクロして交じり合って、これまでメインストーリーだと思っていたのが作中作として押し込められ、逆転して抽象的で謎だらけだったサイドストーリーがメインに立ち上がってきて、そのときバラバラに存在していたコントやシーンが一つの絵になって、ラストシーンに至る! という所で感心した。パズルが解けた楽しさもあるんかなあ。面白い構成だなあと思った。
あと、別々の物語が混じりあったり、所々登場人物の精神が異常であるとしか思えん部分があったりするのだけど、そういうカオスな物語は、魅せたいシーンがあって、それさえあればよくて、そこまでの過程、そこに至る登場人物の心理の動きや感情は、そのシーンから逆算して観客に作らせることにして、丁寧に積んでいくのではないのだなあと思ったりした。