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「無頼侍」鈴木マサカズ

無頼侍 参巻 (ビームコミックス)

無頼侍 参巻 (ビームコミックス)

なんとなく100円で買ったマンガだったが、当たりだった。面白い。

妹殺しの貫壱という凄腕の賞金首と、その首を狙う岩森岩十郎という浪人、ヤクザの頭の変態美女と、その手下の馬鹿。あと、貫壱を狙い岩森と一時組んだ孤児の兄弟。
貫壱は溝鼠と呼ばれる渡世人を追っていた。

貫壱の剣客としての強さは、相手が何かする前に首が飛ぶという描写で語られる。すっぱりと首が飛ぶ。絵はグロいというかただ黒い。で、この作品の面白いのは、やたら多いモノローグにある。小説くさい。しかしエンタテイメント。楽しい。首が飛ぶ瞬間に斬られた人間が思うことがモノローグで語られる。その文章のかっこよさと、内容のしょうもなさが素晴らしい。物語としては、超人的剣客の気持ちいいくらいの首の飛ばし方とか、死に焦がれる淫乱変態ヤクザの姐さんとか、溝鼠の正体とかが面白さになっているのだけど、そういう物語になるべくもないしょうもない人間臭さが描かれていて、それはギャグなのか、つい考えてしまったりする辺りが新鮮で楽しい。ほっといたら首が飛んで飛んで救いのない暗い物語だけど、バカな話が真面目に挿入されるあたりが、エンタテイメントしてると思った。


判断のつかなさという新鮮さ、その辺の集約が主人公らしき岩森岩十郎という男で、どうしょうもなく小悪党で、反省をせず、成長しない。でもその極端な人間臭さが、寛一に首刎ねを躊躇させているほどだ。何だろうこのマンガはと思いながら楽しんで読めた。
ちょっと短い。打ち切りなんかな。溝鼠のあたり、もうちっと描いて欲しかった。