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「11人いる!」萩尾望都

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

同じ主人公を題材にした中篇二つと、短い短編7つが入ってる。

知っている人には今更なのだろうが、タイトルになってる「11人いる!」は宇宙船閉じ込められSFサスペンスとしての傑作。真相は何となく想像できたのだけど、それはこれの影響を受けた作品が一杯出ているからじゃないのかと思った。とにかく1975年なんて僕は生まれていない。


政治単位が、星レベルまで拡大され、異星間交流が行なわれるような未来。宇宙大学最終試験として10人が1グループとして見知らぬ宇宙船内で53日間過ごす。しかし転送された宇宙船内には11人の試験者がいた! というところから物語が始まる。


疑心暗鬼、不気味な宇宙船内、アクシデントが舞台を盛り上げる。最初オチが予想できたといったけど読んでいるときはまた別のオチを考えたり、要するにのめりこんでドキドキした。あとこの漫画は描かれているものの密度が高い。SFを回避しないでちゃんと描いたり、11人もいて大変だろうが、11人(くらい)確かにいるんだという存在感を感じされる。皆大体人型なんだけど、異星間の違いを語るシーンなんかは凄く良かった。人も含めてディテールを大事にするってことなんだろうなと思った。何となくのイメージだけど最近僕が読むマンガは大ゴマや大きな登場人物のせいか、一冊での情報量が少ないような気がする。ドラえもんはコマが小さくて、登場人物の全身が常に描かれているな。


以下ネタばれ含む


あと、主人公が特殊なテレパス(直観力っていってたが)だったり、性未分化キャラがいたり、サイボーグがいたり、主人公の過去だとか、そもそも今にも気が狂いそうな状況だったり、そういう要素一つに拠らない、一つに酔わずに、要素として組み入れているところが良かった気がする。それぞれが協調して、物語を面白くしているんだと思う。これはガチガチに面白い漫画だ。


あと、主人公らのその後で、サブキャラだった王様の話だとか、宇宙大学でのラブコメめいたショートストーリーだとかは、「11人いる!」を読んだことでわかる彼らの友情だとか善良な精神なんかがうまく読者側の環境を整えていて、後日談、外伝としてとても楽しめた。

この本、凄いよかった。拾ったのに買いたくなった(金を払って買うという儀式による一体化欲望)