「ぼくのキャノン」池上 永一
- 作者: 池上永一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/12/04
- メディア: 単行本
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このタイトルとカバーにひかれた。
まず田舎の山の上に設置された戦争の遺物であるキャノン砲が、「キャノン様」として村人の信仰対象となっているという世界のイメージが大好きだ。すばらしく好きだ。メタルマックスを思い出した。近代と前近代が入り混じった感じが楽しいんだろうな。
さらに作者が悪乗りのように作った、「キャノン様」を信仰する宗教の巫女の婆さん(最高権力者)が村の行政権も行使ながら、男だけの男衆、女だけの寿隊という工作員を擁する秘密結社をも取り仕切り、現実的な策謀を非現実的な手段で達成し村に異常な繁栄を築いているというこの設定が、またまた、大好きだ。
さらにこの村の特殊性の秘密であり、物語の核でもある秘密を握る巫女を含めた三人の年寄りたちの目茶な行動や性格、悲哀もなかなか良い。また主人公達は、三人の孫であり後継者候補の少年たちなのだが、わかりやすい特徴と、子供っぽさと、聡明さを併せ持ってて、安心して楽しめる。
話としては、コミカルなキャラクターの行動や、村の秘密を狙う敵の暗躍と、少年たちの心の揺れが楽しかった。映画になった「キャノン様」も見てみたいなと思った。
この「キャノン様」のイメージの時点で、この本は好きの部類になってしまうのだが、最近そういう一点のビジュアルイメージで作品を評価する傾向にある気がする。読書傾向としてマンガやライトノベルっぽいのばっかりになってるのは、その当たりのせいかな。