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「告白」町田康

告白

告白

良く読んでるブログなどで最近良く感想が書かれていて、皆ベタ褒めな町田康を読んでみた。ハードカバーでやたら分厚くて、あんまり聞いてるほどはじけてなかったけど良かった。読んでよかったと今は思う。


文体はテンポが良くて読みやすい。明治初めの河内の話で時代小説なのだが、活字にすると冗長になる解りにくい関西弁(河内弁)の喋り言葉もひっかからずに楽しく読める。時折現代っぽい単語も挿入されて、自由な雰囲気が心地よい。
しかし前情報なく読んでたので、半分くらい読んでも筋が見えない。主人公は河内の水分村に住む熊太郎という農家の息子で、働かずにずっと博打などをして遊んで暮らす日々が綴られる。熊太郎は溢れる思弁(三人称だけど地の文はほとんど熊太郎の心の語り)と言語を一致させる事が出来なくて、単純な周囲の人間達と自分は違うのだと絶望し、うまく周囲のやっていることが出来なくて孤立していく。やがて事件があってさらに熊太郎は人生を捨て鉢になっていくのだが、このダメ人間の思考が良く出来ている。現代の自意識過剰なダメ大学生のダメスパイラルを良く表していて、半ばこいつは俺だと思うようになる。熊太郎は概ね不幸な事になってしまうのだが、自業自得に思えてオホホ、くほほと楽しく読んでいけるのだが、それは前半(第一部*1)までだった。第二部、第三部から話が急転していく。

そして読み終えた感想は、哀しい。自分と良く似たところのある、でも其れとは違う良い所もあって何となく好感の持てた熊太郎の行方はとても哀しかった。第二部ではハラハラして、第三部のラストのラストはああ、そうなのかと思った。自分自身について考えるきっかけにはなったような気がする。

*1:勝手に付けた