白飯

好きな物100

「あちゃまあ。R(リターンズ)」演劇実験場下鴨劇場

学生劇団で、料金もカンパ制。面白くなくても文句は言わない。というような覚悟で見に行った。(文章ほど悲壮な覚悟ではなかったが)


そしたら、良かった。なかなか楽しかった。エネルギーの供給という点では、とても満足した。


この劇団には友人が所属していたこともあって、昔、3回くらい見に行った。どのときも、代替わりはしていたのだが、満足したのを覚えている。やはり、受け継がれているものが何かあるのだろうか。


今回は、今後の参考のために「台詞を言うときに、役者はその台詞を言うための感情や背景を持っているか」を考えながら劇を見た。とりあえず、台詞を言うときの役者の表情やら読み取れる感情に注目してみた。


この劇では内容は三つの芝居のオムニバス形式となっている。
ので、全部に感想書いたら、長くなった…。

第一幕「サカナカ」

世にも奇妙な物語のような感じ。失踪した恋人を探しに恋人の姉を訪ねた彼氏が、やがて驚くべき真相に辿り付くというストーリー。そのなかで病弱でひきこもりの姉と派手な妹の確執が描かれる。テーマは「孤独」だろうか。


この病弱で静かな姉が持つ狂気という設定は、萌えシチュエーションとしてはとてもよろしい。望まれる推理小説の犯人は常に、力の強い髭もじゃの男よりは、今にも折れそうな白い肌の狂女である。


シリアスな話だったので(?)、最初退屈だった。素人意見で恐縮だが、台詞を言う方の感情なりの準備や作りこみが甘いような気がした。姉は大人しい女性だが、微妙な狂気やら人らしい感情が見えれば、姉の存在感をもっと感じたら、台詞が活きてくるのだろうなと思った。彼氏の方はもっと演技してた気がするが、どこかで見たような仕草、表情などが目立った。既成概念的なものを安易に使いすぎてないかと思った。


三作の中では話としてしっかりしているような気がする。最後のニュースなども少し話に広がりが見えて面白い。逆に真相の説明とかどんでん返しとか、なくして、物語を収斂させても、それはそれで好きになれそう。

第二幕「飛び出せ! まげらびっつ」

「あちゃまあR」というタイトルも意味がよくわからないが、この「まげらびっつ」も謎だ。髷を結った兎達、だろうか。迫力はありそうだ。


急造のバンドメンバーがライブをやるというだけの話だが楽しかった。ピューと吹く!ジャガーパラレルワールド系の話が思い浮かんだ。


こういう一から作る笑いというのは、脚本と役者の技量、雰囲気と全体のタイミングが、シビアに揃ってなければできないと思うが、普通に面白かったと思う。今度は狂女が三人出てくる。突っ込みも含め、コミカルな言動が多いが、表情などに説得力があったのが良かったと思う。引き篭もりでアニメオタクのキーボードの人が面白くて、この人絶対OBだと思ってたら、後で聞いたら二回生だった。うーむ。所詮素人の考察だ。


突っ込み役の普通人ボーカル「むーちゃん」は直接設定は出てこないが、もしかしたらネットアイドルだったのかもなあ。名前からして。そうなると、狂女が四人だ。

この劇団、今女の子ばっかりなんだなあ。

第三幕 水を求めて三千里

四万十川の水が枯れ、水不足に悩む世界で、父のために水を探す旅に出た「まるこ」と「白いサル」が、途中出会った河童の助けを借りて、ダムを建設し水を欲しいままにする水富豪と対決する話。


こういう出鱈目なファンタジーは演劇の十八番のような気がする。二幕でもあったがその場で一発芸大会が挿入されたり、あまり意味のないアドリブコントみたいなのが入る。ストーリーと関係ないのはあからさまだが、面白いので楽しむ。てか、ストーリーに関係在ることが少なすぎて別に目立たない。自由って素晴らしいなあと思った。


河童とか、もうそりゃ皆大好きだもんよ。河童の世界を捨て、都会で生きるシティボーイズの兄河童に弟が問いかける「河童の誇りはどうしたんだ!」「それも大事なものだから、銀行に預けてある(決め)」というシーンやら、農林水産大臣の命を受けて水不足を解消するために遣わされた水不足ハンターVS水不足ハンターハンターのところが面白かった。H「くそう!あんて厄介な奴だ!」,HH「そうさ、俺は只の厄介な奴さ!」水不足HH、爽やか過ぎる。
こういうのが、粗筋から全く想像できない。粗筋自体は間違っていないのだが。


第一幕で、恋人を探す青年を演じた役者さんも、少し大きめのカゴくらいのバスタブに浸かりながら台車で運ばれ、入浴剤代わりに片栗粉を入れられて「ツュルツュルする!ツュルツュル!」とはしゃぐ水富豪の役をしていた。クライマックスのまることキュウリと水鉄砲で撃合いを演じていた。さっきよりずっと合っている気がする。舞台上は水浸しだ。


ごく自然に、なんてこの人たちは楽しそうなんだろう、と客に感じさせて、それが独りよがりなものでなければ、きっと演劇は楽しい。役者も楽しいんじゃないか。演劇ワークショップをやろうと思った原点に帰った気がした。