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「鴨川ホルモー」万城目学

鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

森見登美彦と同じ臭いのする京都作家として、いつか読もうと思ってた一冊。
文体やらアホらしい展開などが、森見作品と良く似ていると思った。最初のホルモーが出てくるまで、長く感じたが、ホルモーが出てきてからは、テンポ良く、すっと読めた。
あとネタバレ。



しかし、この物語はもしかして主人公の妄想なのではと思うほど都合良く、まあ都合良いのは物語だから良いのだけど、主人公が悪いヤツではないという以外良いところが無い(書かれてない)ため、まったく共感できない感じになってしまった。いや、この主人公の大学生の性格はよくわかるのだ。頭で考えるばかりで行動できず、自意識は強く、ただ悶々と日々を過ごし、周囲に流されるように生きる。
しかし、こいつ、一方的な片思いが敗れたとしるやひきこもり、サークルメンバー全員に迷惑をかけた挙げ句、自分が恋敵と一緒にいたくないという理由のみで、サークルメンバー及び対戦相手のサークルメンバー全員に迷惑をかける方法(ホルモーは京都の四方の4つの大学のサークルで戦うが、そのサークル内部でも二つに分けて、計8つのグループにして戦う形式に変更する。これは1サークルからの発議によりでき、他のサークルからは反対できない)を選んでしまう。発議には発議者のサークルの半分のメンバーの賛同が必要だが、何故かそれに賛同するものも現われ、そんで作った新メンバーで仲間になった女の子がメチャクチャ強くて、その恋敵のグループと決勝戦を戦うことになってしまう。そして、その女の子、最初は大木凡人に似ていると恋愛対象から外してたけど、メガネを外すと可愛くなって、しかも主人公に一目惚れだったという。まあそんで、最後にはハッピーエンドで付き合うのだけど、やっぱり告白も女の子からで、告白されたら好きになるという。このへんすごくリアルだ。
この主人公というのは、人徳だけで、彼女を作り、青春に良い思い出をつくってしまう。この人徳がいまいちピンとこなかったのだろうなあ。自分は特に何も動かず、人の迷惑を考えないが、自分の気持ちは最優先という、ある意味とてもリアルな大学生像になっている。森見作品も同じだけど、主人公というか文章が面白いので、許してしまってた気がする。
ひきこもりから、最後までは展開のテンポがとても速い。まあ他のサークルとか、同サークルでも主要人物以外は全く描かれないので、結局恋敵との対決に集約されてしまってるところもある。そこからも、主人公の主観で構成されているような気がするんだよな。
吉田代替わりの儀のような大学生の一つの形態などはとてもファンタジックでありながらリアルでもあるので楽しかった。感想書いてて思ったけど、この物語は、リアルな一つの大学生像を描いている気がしてきた。ご都合主義に見える部分も、案外人間というのは何もしなくてもラッキーだけでなんとかなることもある、という所が確かにあるので、それでいいのかもしれない。あと全部主人公の夢だったでもまたリアルな気もするな。うん、いい話だった。感想書いて良かった。