白飯

好きな物100

鈴虫寺に向かう花道・地蔵院

桜は、川沿いに植えられていた。桜の枝が自分より低い位置にまで垂れ下がっていて、とても綺麗だった。桜が目線もしくは下方にあるので、歩いているだけで桜が目に入る。思う存分に枝を伸ばした桜の木はとても大きく感じた。しかし、こんなに花咲いてどうするんだろうと初めて思った。花が多すぎる。木は長く生きるから、あんまり子孫とか残す木ないのだろうか。

桜に混じって、カエデも一緒に植えられていて、華やかな桜の中で、凛とした緑がとても心地よかった。春だけでなく秋すらもここは良い所ですよ、という欲張り感。家族連れや観光客らしい姿もあった。皆カメラを持って嬉しそうだ。

桜を眺めながら川を遡っていくと、鈴虫寺が見えてくる。鈴虫寺は前に行ったのでスルーして、逆方向に歩く。ひんやりとした階段を上がり、驚くほど静かな住宅街の小道を行くと、地蔵堂があった。門をながめると、その後ろの竹林と、遠くに見える地蔵堂が、異世界のような印象を抱かせる。参拝料500円と高い感じがしたが、近くの名所を経験しておこうという気持ちで入った。観光客は僕ら以外誰もいなくて、とても静かだった。うぐいすの声が響き渡っている。雨が降ったからかもしれないが空気が湿っているようで、ひんやりとしていた。竹林を抜けると、歩く所以外は苔と背の低い木の庭園のようになっている。

寺の中は、中央に地蔵堂、左に寺を建てた細川頼之の墓、右に細川頼之の庭園があった。墓は、石碑とそれにそうように木が生えていて、時間を感じさせる静かな威圧感があった。
庭園は小さなものだったが、古い家屋が開放されていて、そこで座って眺められる。そこでは抹茶(400円)が飲めて、人を呼ぶ用の小さな鐘がおいてある。先客がいたらしく、抹茶の椀がふたつ縁側に置いてあった。
座って庭を眺める。1時間くらいは歩いていたので、座って眺められるのは嬉しい。庭の中央には、〜侘助と立て札に書かれた椿があって、あちこちに名前の知らない草や、石が点在している。椿の枝のいくつかは、竹で支えられている。どのくらい昔からあるのだろう。
静かだ。庭の向こうでは、庭の掃除をしているお爺さんがいて、そのほうきの音と、時折鳴く鳥の声だけが聞こえる。
庭のスケールを意図的にだまくらかして、庭を、草原の世界に超巨大な椿の木があって、あちこちに巨石が点在する世界としてみる。竹は、椿の上層に昇る為のエレベータだろう。人類の文明は、巨大樹の上に移り、各枝の集まり毎に町が形成されている。その文明から外れた場所に住む人間が、巨大樹の根元から、巨大樹を昇っていく話を想像していた。多分、人が住んでいる階層より少し下にも、廃棄された機械や、町があるのだろう。
帰る頃には3組ほど観光客がいた。ちょうど隙間の時間にこれたようだ。秋はもっと、人が多いのだろうか。人には穴場スポットとして、知ってる人風に紹介しよう。