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好きな物100

「1000の小説とバックベアード」「世界の終わりの終わり」「青酸クリームソーダ」「デンデラ」佐藤友哉

佐藤友哉の本が気になって読んでしまう。同年代の作家というのと、あと手軽に刺激がもらえるからだろう。ふつう、物語は没頭するまでに時間がかかったり、クライマックスは最後になるのが多いので、ゲームやマンガに比べて、時間のかかる娯楽なのだと思っているけれど、佐藤友哉の話は、どこにいくのかわからない(どこにいっても気にしてはいけない)という気がするから、数ページ先に楽しみがありそうで、読んでしまうのだと思っている。


1000の小説とバックベアード

1000の小説とバックベアード

小説家とは一線を画す、誰か個人のために物語を書く片説家という職業の青年が、片説家を首になり、小説を書こうとする話。設定が面白そうで読んだ。思ったより地味だったが、「灰色のダイエットコカコーラ」や「世界の終わりの終わり」のようなどうしょうもない無惨さのない話のように思えた。


世界の終わりの終わり

世界の終わりの終わり

小説家になったけど売れなくてフェードアウトしつつある青年が、墜ちていく姿。無惨無惨。ああ、一体どこまで墜ちていくんだという暗さ。発する言葉は歪だが、自分なりに「ちゃんとした」生き方を持とうとほえ続けるが、アルコールに溺れ、有言不実行し続ける。周囲の人間を自分で考えずに生きる豚と談じながら、誰がどう見てもダメ人間となっていく姿を書くという佐藤友哉のスタイルが見えてきた。


[rakuten:book:13126565:detail]

鏡家サーガ入門編と題された、久方ぶりのバカバカしい世界の話。主人公が、何にもしないけど、ひたすらほえ続けるというスタイルは共通している。コンビニの帰りに竹やりで人を殺す少女・灰掛めじかを見かけた鏡公彦は、一週間で殺人の動機を見つけないと死ぬことになってしまう。物語内部でミステリについての言及が、内部で行われるが、最初からそんなつもりで読んでなかった。最後に決心することらへんがよくわからなかったので、こいつら口ばっかりの人たちという印象になってしまった。


デンデラ

デンデラ

姨捨山で、捨てられた老婆達が、コミュニティを形成し、村への復讐を誓ったりして生きてるけど、熊とか襲ってきて無惨、無惨という話。主人公の斉藤カユは、これまで読んだ佐藤友哉作品の主人公と同様に、他者の堕落や醜い悪を見逃さず、苛烈に断ずるのだけど、自分がどうすべきかはわからずに、ときに流され、ときに打ちのめされる。その辺りの普遍的な像が見えた気がした。普通、人間は弱いので、周囲に流されたり、自分の信念などというものを貫けない。普通、と書いてしまうのは僕が弱いからで、そんな風に感じない人が成功していくのかもしれない。信念とか誇りとか何でも良いけど、自分の思う本当のことを考えて考えて、その結果虐げられたり死んだりするけど、それはどうなの?という話のような気がした。
あと現代なのか昔なのか、老婆の台詞にしては単語が現代風過ぎたり、名字がほぼ全員違うのは、田舎としてはどうなのか、それともすごい大きい村なのかとか思ったが、半ばファンタジーなのだろう。