白飯

好きな物100

ヨーロッパ企画「火星の倉庫」

コンテナが山ほど詰まれた港が舞台。仕事をさぼってコンテナの酒を飲む港湾労働者、近くのバーのホステス、ホステスの妹の大学生、喋り過ぎて組織の秘密をもらしてしまいコンクリ詰めされて落とされる寸前の男、その兄貴分、柄の悪い組織の男、落とし屋ビリーが、そんで最後にはもっとスケールのでかい人たちまで、入れ替わり立ち代り話が進んでいく。


舞台には実際にコンテナがいっぱい積まれていて、それを組み替えたり、上にあがったり立体的に舞台が使われている。上に上ったりするの見てると、ちょっとヒヤヒヤする。人の出入りが凄くあって、展開に応じて、コンテナの状況も変わっていくので、結構大変そうだと思った。よく考えてあるし、段取り間違えると、話が進まなくなる可能性だってあるわけで、すごいなあと思った。
でも明らかにハプニングっぽいのがあって、コンクリ詰めされた男が台車に乗せられてて、柄の悪い男に蹴られるシーンがあるんだけど、勢いが付きすぎて港のセットの外(セットにおいては海)に落ちてしまうところがあって、コンクリ詰めされた男が「浮力があって助かった!浮力があって助かったけども!」って言ってたのが面白かった。さすが。


何となくヨーロッパ企画の笑いは、日常生活で感じてるけれど、取り立てて言語化することのない人の気になるところ・嫌なところ・面白いところを取り出して見せる所だと思っていたけれど、今回はそっちよりもコント的な笑いが多かった気がする。特にコンクリ詰めの喋りすぎた男と柄の悪い男、落とし屋ビリーが面白い。


以下ネタバレ含む。一応。



今回も、前の公演「ブルーバーズ・ブリーダーズ」の最後みたいな派手な機械仕掛けの神(宇宙人)が降りてきたわけで、確かに驚きとそれまでの冗談のような伏線が生きてくるわけだけど、後半の展開がどうにも拙い感じがした。いつもならもっと、隙がない(ように見える)終わりを用意してくれるのに。


単純に後半僕がひいてみてしまったのがよくなかったのかもしれない。何で普通の一般人が出入りするような港に宇宙人と世界スケールの取引が行われてるのかとか、宇宙人留学生がコンテナに入ってたのは何故かとか、堂々とUFO出して全く秘密裏じゃねえだろとか、そういう細かいことはどうでもいいのだけど、労働者達がマフィアに捕まって先行き大変だとなったときに宇宙人と、世界の偉い人組織が出てきて、労働者・マフィアのアイデンテティがリセットされて、一般人グループVS宇宙人+世界の偉い人になってしまう。そのリセットのされ方が雑だった気がするのだった。さっきまで殺す/殺される側だったのが、友達みたいになってしまうのは、楽しいのだけど、それが唐突過ぎる。そんで、気になったのは、一般人グループが、世界の偉い人に見つかったとき、有無を言わさず発砲されて、二人負傷するのだけど、それほっといて、いつもの温いトークに入ってしまうので、バランスが悪く感じた。面白いけど、笑ってていいの?みたいな感じ。で、世界の偉い人も最後は何でかフランクに説明するようになっちゃうし、ラストは、全員が温いグループレベルまで降りてきてしまって、そんで何故かとってつけたような悲しいロマンスみたいになって終わる。救いが全然ねぇ。


もしかして、そういう救いのないブラックな笑いだったんかなあと、今思った。核とか環境破壊とか、笑いに使っちゃうのも、そういうことだったんかな。