白飯

好きな物100

東景

東京に行ってきた。組込み技術者のセミナーで、二日間。お泊りだ。出張のまずない部署なので、僕の場合、初出張である。金もらって勉強に行く。幸せだなあ。朝5時台の電車の乗らねばならないという起きれるか非常に怖かったのだが、うまく起きれて、電車も調べていた通りに(山手線は逆廻りに乗ってしまったが、ルートは二つあったので大丈夫だった。ぬかりなし)乗れて、無事にたどり着いた。すこぶる順調。久しぶりの講義で、朝も早かったし、絶対寝ると思っていたのだけど、講師の人が結構、講義の上手い人で、内容も割りと楽しかったので、寝なかった。そして、まだ明るい16時30分に一日目終了。順調すぎた。


何にも考えてこなかったので、ぽっかり空いた時間に戸惑った。全く東京の名所が思い浮かばない。とりあえずホテルに行った後、ネットカフェで、調べてみようかと駅前に行ったけど何もなく、さらにとりあえず通り道で近くの新宿に向かった。そして地図を見て都庁の文字を発見したので、またまたとりあえず都庁に向かった。



JR新宿南口から都庁方面に歩く。突然道が行き止まりで、しかも自分が道を見下ろしていて、自分のいる場所が一段上の道に居る事に驚愕する「俺は新宿駅から平坦な道を歩いていただけだったのに、いつの間にか道を見下ろしていた」そしてテンションがかなりあがる。思わず、メトロポリスやぁー!と叫びたくなる。新宿モノリスって何だ! パスワード教えてくれるの!? とにかくビルのでかさに興奮する。窓の多さが半端じゃない。そら、ビルの窓でテトリスとか、愛してるの文字作るとか、思いつくわ。ああいう発想は、こういうビルがあるからできるんだなー。
やたらに立体的な構造に目が輝く。タクティクスオウガのような3D地形のSLGの発想が見える。人間の思いつきというのは人間だけでは作れない。人間の作る環境やその他の事物に刺激され後押しされるように生まれるんだなと何だか納得する。



都庁。暗闇におどろおどろしい。ここが東京の政を司る場所……! すげえ、全然感慨深くない! だって京都府民だもの! しかし、ここにある建物のでかさは何だ。デカイものはスゴイ。シンプルだが真理なんだろうな。東京はパワーがある。




新宿を歩き回り、ラーメン屋を探すが、疲れて「どうとんぼり神座 新宿歌舞伎町店」に入る。入ってから、気付いたけど、大阪のラーメン屋に東京で行ってどうする。でも店内にたくさん貼られたサイン色紙の権威にだまされてしまった。ラーメンはまあ美味しかったけど、滅茶苦茶に美味いわけでもない。こってりじゃないと食べた気がしない僕だからかもしれないが、失敗したという気持ちしか残らなかった。もう少し歩いたら、2、3軒こってりしたラーメン屋が並んでいて、凄く悔しかった。


そして、帰り際、漆黒の意思を持って、カラオケに向かう。僕はとうとう独りカラオケの世界へ入門する。

独りカラオケ……ヒトリカラオケ……一人からOK。な、なんだってー。
前から一度やってみたかったのだけど、ずっと踏み込めずに居た。それがこのまえ敬愛する漫画家のうすた京介先生が日記で独りカラオケのよさを語っており、其れと誰もも知る人の居ない東京という環境、「新宿」で「東京」を歌いたいという洒落にならない思いに背中を押され、ついに踏み込んだ。射程に入った。

そこはとても素晴らしい世界だった。僕は世界の変わるのを感じる。一時間のつもりが二時間になった。歌いながら楽しさが駆け抜けるのを感じた。カラオケは苦手で、コミュニケーションの場の一つでしかなかったのだが、独りカラオケという甘美な果実により新たなステージに映る。歌う事は楽しい。それがやはりカラオケが世の中に広まった本質なのだろうな。凄く楽しい。誰の目も気にせず、下手糞な歌を、好きなように歌う。力を込める。力を込めない。手を振る、身体を振る。顔を歪ませる。声を響かせる。歌い手は僕。観客も僕。素晴らしい。
そして、独りカラオケはまた、複数人のカラオケを決して否定しないという事に気付いた。また別物なのだ。うまく歌えたときや、楽しい歌のときは、この楽しさを共有したいという気持ちになる。そうか、これがカラオケなのか。
多分、癖になる。疲れたら行こう。