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シュマリ

シュマリ(1) (手塚治虫漫画全集)

久しぶりに手塚治虫のマンガを読んだ。図書館で、上中下巻を一気に読んだ。手塚治氏のマンガをこんなに面白いと思ったのは初めてじゃなかろうか。完全懲悪の、ムカつく奴や悪い奴をやっつけて終わる形式のマンガに慣れすぎて、主人公が生きて死ぬ間の一時代を見せる形の火の鳥アドルフに告ぐみたいな手塚マンガは苦手だった。でもこういうのもいいなあと思えるようになったということか。

出版社/著者からの内容紹介
別れた妻、女たち、土地人。愛するものを守るため生命を賭けて戦う孤高な男シュマリの旅の目的は? 江戸が東京と名を変えた明治初頭北海道の自然の中で、熾烈に展開する壮大な男のロマン!!(夢枕 獏)

いかなる逆境にあっても、生きることをやめないシュマリの生命力に、登場人物と同様に惚れてしまった。この物語の中の北海道は、自然が猛威を振るい、和人が無法に暴れまわる、そんな中を、ひたすらに生きていく姿は、とても頼もしく、人間って強いなあと思えた。

登場人物も大概悪党なんだけども、そんな中でも家族への愛情や、友情なんかがある。人だからか。中でも悪党一族でシュマリを憎んでたお喬がシュマリを一途に愛する所が良かった。家族を愛し育てシュマリを待つ、シュマリが元妻のお妙を愛していることを知っても。晩年、シュマリが「お前はオレの一部みたいなものだからな」という言葉に涙ぐむ所は最高に良かった。あとがきで手塚氏も書いてたけど、アイヌの問題や北海道に入ってきた人々の苦しい暮らしとかが出てくるけど、テーマとして深く掘り下げられてない。シュマリは戦うけれど、エゾの国から、和人を追い出したり、アイヌの人間を助けたりは出来なかった。それでもこのマンガが面白かったのは、人間の生きる力と、愛情が前面に溢れていたからだと思う。